現地へのリスペクトを発信し、真剣に向き合う#3~株式会社Ay代表村上采さん
今回インタビューさせていただいたのは現役大学生でありながらファッションブランドAyの代表を務める村上采さんです。
第三弾では、洋服づくりの拠点の一つであるコンゴでの話を中心にお伝えします。
彼女はコンゴでどのような経験をしてきたのでしょうか?
*本インタビューは2020年7月時点での取材内容となります
コンゴ人との絆
コンゴの方と信頼を築くためにどのようなことをされましたか。
しっかりと「リスペクト」を発信することです。
具体的には現地の言葉であるリンガラ語を勉強して、ある程度会話ができるようにしました。
例えば、コンゴにいるのに日本語で「こんにちは」と言われてもコンゴ人には全然リスペクトが伝わらないと思います。
現地の言葉で話して、自分がコンゴの生活に入っていきたいと発信することが信頼につながると思います。
村上さんがコンゴの方との信頼関係を実感した場面を教えてください。
ミーティングをするときにコンゴ人のメンバーが私を頼ってくれたり、彼らが私に対して家族のように接してくれたりする時ですね。
私のやってきたことが信頼につながって、彼らに受け入れられていることを実感します。
コンゴへの渡航で一番印象に残っていることを教えてください。
コンゴ人の親友に「日本人は毎回なにを残してると思う?なにも残してないよ」と言われたことです。
この言葉は、コンゴで開催したイベントが私たち大学生が現地のニーズを把握できていなかったことが原因で、うまくいかなかったときに言われました。
この言葉で、私はボランティアした学生側が自己満足で終わっていることに気づきました。
これは先進国の途上国に対する態度が表れた世界の縮図のように思います。
先進国は途上国に対していいことしていると思っていても、現地から見たらうれしくないことが起こっているのを実感しました。
だからこそ現地にしっかりと入って、自らが彼らのバックグラウンドや文化を体験し、現地に真剣に向き合う必要があると感じています。
あと、コンゴ人が本音で向き合ってくれてうれしかったですね。
日本人とコンゴ人は自然と上下関係ができてしまっていて、普段コンゴ人が日本人に対して率直な意見を言うことはあまりありません。
でも私が対等に向き合っていることが伝わったから本音を伝えてくれたのだとと思います。
だからこそ、この言葉を経て自分がどう行動するのかが大切だと思っています。
活動のやりがい
活動を通じたやりがいを教えてください。
商品開発の過程とAyの商品がお客様に届いたときにやりがいを感じます。
商品開発においては、地域に入って現地の方とコミュニケーションを取りながら進めるので時間や労力がかかります。
例えば、コンゴでは洋裁の専門用語などが現地語で分からないので身振り手振りで伝えたり、お母さんたちは意志が強くて論争が起きてしまったりします。
群馬でも伝統的な産業に関わっている方は、高齢の方が多いのでデザイン面等でコミュニケーションが難しいです。
でも、このような過程があるからこそ、より良い商品を開発できると思っているし、商品ができたときには「これが広まるのはすごく楽しみだな」と達成感があります。
もう一つのやりがいは、商品が届いてお客様がDMをくださったり、ストーリーでシェアしてくださるときです。
その瞬間に今までの苦難がすうっと抜けて、達成感とこれからもより良いアイテムを開発しようと思えます。
愛が詰まったお洋服をお客さんが発信することで、愛が広がっていることを感じています。
読者へのメッセージ
社会問題の解決を志す読者にメッセージをお願いします。
「ボランティアをしてあげる」という考えは一旦捨てたほうがいいと思います。
なぜなら、ボランティアをすることさえも上下関係を生んでしまっていると感じるからです。
「このボランティアは今後何を生み、誰をいい方向に導き、自分はどうなるのか?」を自分で考える必要があると思います。
現地をしっかりと自分で見て、どうアプローチすべきか自分で考えることが大切です。
そして、社会課題はたくさんあるので自分が無力に感じるかもしれません。
でも悲観的に社会課題を見るだけでなく、必ずある魅力にも気づいてほしいと思います。
魅力があってこそ、その裏の課題だと思っているので。
悲劇や情を語るのではなく、夢を語れるような社会に一緒にしたいですね。