観光から地方創生を#1~YOK株式会社 方嘉靖さん~
今回インタビューをしたのはYOK株式会社の方さん。
彼は観光事業を通じて地域創生を目指す若手起業家だ。
今回zoomを通して、現在方さんが活動拠点にされている西会津からインタビューに応じてもらった。
方嘉靖
中国上海生まれ。
2010年高校卒業後来日、中央大学商学部在学中にデンマークコペンハーゲン大学都市計画学部に交換留学。
現地DMC大手BALDERにて、テーマ型ツアーの商品造成などに従事。
卒業後、ホテル業界大手の藤田観光や、オーダーメイド型旅行会社仙貝旅行などにて、インバウンド向け商品造成を多く経験。
2018年、地方の滞在型観光に特化した旅行ブランド「日本巡旅」を立ち上げ、「地域の暮らしに宿る美意識」をコンセプトに中華圏観光客向けの情報発信を行い、現在台湾と香港を中心に2万人ほどのトラベラー情報交流コミュニティを運営中。
2020年8月より個人事業として、NCL西会津のプロジェクトに参画、西会津を含む会津地方の観光基盤作りに関連する事業を展開する予定。
*本インタビューは2020年10月時点での取材内容となります
現在の活動内容
「はじめまして!」とインタビューをはじめると、旅が好きだという方さんは現在の活動内容について教えてくれた。
「現在は福島県の西会津という人口6000人の町で、『ゆっくり滞在しながら地域の暮らしと文化が堪能できる』新しい観光のスタイルをゼロから作っています。」
と方さん。
この「新しい観光」という言葉についてもう少し深く訊いてみた。
新しい観光のスタイル
新しい観光のスタイルとは、「ゆっくり滞在しながら地域の暮らしと文化が堪能できる」ものだと言う。
私たちが「観光」と言われて頭に浮かべるのは、世界遺産などの観光名所をめぐる旅。
しかし、方さんによるとそれは旅の一形態でしかない。これからの観光はもっと違う形になっていくと言うのである。
というのもこれからは働き方が変わっていき、観光と暮らしの境界が曖昧になっていくから。
様々な働き方が普及するこれからの時代では、都会でも田舎でもどこでも仕事ができるようになっていく。すると暮らしと観光は分け隔てられるものではなくなっていくのだ。
だから、彼が提案するのは一人一人に合わせた滞在型の旅。そして、その旅において旅人は地域の暮らしと文化を堪能し、一時的に住民になると言うのだ。
例えば、方さんが提案するのは、行き当たりばったりで町をめぐる旅。
この旅では従来のように時間を定めない。旅人は町をぶらりと散歩する。その中で興味のあるものがあれば、そこに行って話を聞く。その話に付随してほかに興味がでれば、また別の所を訪ねる。時間を定めず流れるようにコンテンツを提供することで、旅人は地域の人になったかのような気持ちを味わえる。
これこそが方さんの提案する観光スタイルだが、このスタイルは方さん独自のものではない。
ヨーロッパや中国の一部地域では、先ほどの観光スタイルが拡がっているようだ。
「彼らが観光をする動機は、自分の興味関心がある地域の人々の営みが見たいとか交流をしたいとか。それこそ一時的な住民になって、何か新しい発想と新しい自己を発見するんです。これは少し哲学的ですが(笑)。とにかく彼らは、地域の普通の暮らしの中からこそ喜びを感じます。」
「モノの豊かさではなく心の豊かさが問われる時代です。」とも。
ミニマリストが人気を集めている現在、私たちは観光の形も考え直す必要があるのではないか、と考えさせられた。
新しい観光が課題解決
また、この新しい観光の形は日本の観光業界にある二つの課題を解決すると言う。
一つ目はオーバーツーリズム。
オーバーツーリズムとは、観光地へ過剰に人が押し寄せることだ。そのことにより、ゴミ問題や交通渋滞などが発生し、地域住民の生活を圧迫するようになる。現在、日本では鎌倉や京都などでこの問題が発生している。
方さんは、新しい観光が浸透することで、この問題は解決されると言うのだ。というのも日本各地に観光資源が見いだされ、旅人が分散するからである。
新しい観光により、人でごみごみとした町は落ち着きを取り戻し、「観光資源」が見出されて来なかった町が旅人を魅惑するようになるのだ。
二つ目が滞在型観光の浸透不足。
移動手段が増え移動にかかる時間が昔と比べて短くなっている現在では、旅人は観光地を日帰りで訪れることが多い。しかし、これではその地域にほとんどお金が落ちない。旅館やホテルは経営が圧迫されているところもある。
新しい観光の形は、この問題も解決する。
なぜなら、新しい観光のコンセプトがゆったりと地域の暮らしと一体化する滞在型観光だから。旅人はその地に何泊かして、地元の経済を回すことになるのだ。
さらに「新しい観光が平和に寄与する」と彼は言う。
新しい観光では、旅人が地域と密接に関わるからだ。
色々な国の人が様々な国を訪れ、交流しあえば相互の理解が深まる。
そうして、観光から平和が訪れるのだ。
次回予告
新しい観光を通して、地方活性化を図る方さん。彼の事業は、日本の観光問題を解決するだけでなく、地域の平和にも貢献するものでした。この斬新で根本的な彼の考えはどうやって形成されたのか。次回は彼の学生生活に迫ります。