チョコレートを知らないカカオ農家さん⁉︎#1〜Mpraeso合同会社CEOの田口愛さん〜
今回インタビューしたのは、Mpraeso合同会社CEOの田口愛さんです。
ガーナのカカオ農家さんを支援している田口さんの、具体的な取り組みや国際協力に対する想いをお伺いしました。
みんなが「地球の裏側をチョコっと思い出す」ような世界に向けて、どのようなことをされているのでしょうか。その裏側に迫ります!
田口 愛(たぐち あい)Mpraeso合同会社CEO
国際基督教大学2年生 休学中1998年生まれ。岡山県出身。
生まれてすぐに父の仕事の関係で幼少期の一部をポーランドで過ごす。
2018年6月 初のガーナ渡航
2018年11月 グラミン銀行でインターン
2019年8月 GOUNOU(ベナンのチョコレート企業)でインターン
2020年5月 Mpraeso合同会社設立バングラデシュのグラミン銀行やベナンのGOUNOU(チョコレート企業)などのインターンを通してソーシャルビジネスを学び、Mpraeso合同会社を立ちあげる。
Mpraeso合同会社を立ち上げて、現地にチョコレート工場を建設したり、ガーナのカカオ豆の可能性を広げ、カカオ農家の所得向上や教育医療などに還元する基金設立を目指している。
*本インタビューは2020年4月時点での取材内容となります
現在の活動について
現在どのような課題に取り組んでいますか?
現在、取り組んでいる課題は、ガーナのカカオ農家さんが不条理な状況に置かれていることです。
「チョコレート」と言ったらなんとなくガーナが思い浮かぶように、日本に輸入されているカカオの7割はガーナから来ています。
しかし、ガーナではカカオ豆は政府により均一な価格で買われています。
品質に関係なく値段が一定のため、「どんな豆でもいいんだ」と農家さんのモチベーションはとても低くなっています。
その結果、カカオ豆の中に石や木を入れてかさ増ししたり、カカオの木に愛情を持たず育てたりする人も多くでてきました。
これでは、負のスパイラルに陥ってしまいます。
品質の低さから買い手が減り、取引価格が低下すれば、貧困が進む可能性があるのです。
こういった状況を踏まえて、私は農家さんや高品質な豆が評価されるような仕組みを作ろうと考えました。
その仕組みは、ガーナ政府に集まったカカオ豆の袋に1つ1つ識別するため、 農家の情報がわかるQR コードを付けて出荷するものです。
また、頑張った農家さんには、高く買ってくれるショコラティエさんと繋ぎ、そこからお金が入るようにしています。
※ショコラティエ
チョコレートから様々なデザートや菓子を作る、チョコレート専門の菓子職人
政府が一括で輸出を行うことで国が利益を得れるメリットがあると思いますが、田口さんの新しいシステムと政府の間でいざこざはありませんでしたか?
もちろんあって…。
政府は農家さんから豆の2倍,3倍の値段にカカオ税を取っています。
また、国外はカカオ豆を政府からしか買えません。
これは法律を変える必要があり、すごく難しいことです。
現在は、政府を根本的に変えるまでには行きませんが、農家さんに還元をすることに対しては賛成してもらえ、徐々に政府の方も変わって行ったらいいなと思っています。
もっと、農家さんのことを考えてもらえる政府になってほしいと思って活動をしています。
社会課題に関心を持ったきっかけ
社会課題解決に取り組もうと考えたきっかけを教えてください。
きっかけは、19歳の時にガーナに渡航したことです。
私は小さい頃から元気を出したいとき、チョコレートを1粒食べる習慣がありました。
テストの前やみんなの前で発表する時などはいつも食べています。
小学校の時に人生をチョコレートと共に歩んでいることに気づき、カカオ農家に興味を持つようになりました。
そして、純粋にカカオ農家さんにお礼を言いたいと思い、19歳の時にガーナに渡航しました。
しかし、現地に行って
「私はチョコレートが大好きなんです。作ってくれてありがとう。」
と伝えると、反応は予想外でした。
そもそも、チョコレートを知らないカカオ農家さんが多かったのです。
現地ではカカオ豆が栽培されていますが、チョコレートは製造設備がなく高価なため、手に入れるのが難しいです。
そこからは色んな村を訪ねて、カカオ豆からチョコレートを作るワークショップを開催しました。
みんなに持ってきてもらったカカオ豆で作ってみたところ、「世界にこんな美味しい食べ物があるんだ!」と喜んでくれました。
しかし、そのワークショップに参加してくれるカカオ農家さんの中には、貧しくて学校行けなかったりマラリアの薬を買えなかったりする人が多いのです。
持続的なことは何もできてないのではないかと悩みました。
そして、日本に帰国しショコラティエさんからお話をお伺いしたり考えたりして、今の仕組みにたどり着きました。
第2弾では、田口さんが現地で感じた必要なスキルやこれまでの困難な体験について伺いました。
ぜひご覧ください。