フリーランスで社会課題解決~今を生きる国際協力師 原貫太さん~
学生時代から国際協力を始め、アフリカ支援のNGO起業を経て、フリーランスで国際協力を行っている原貫太さんにインタビューをしました。
アフリカと日本を往復しながらブログや講演、YouTubeなどで生計を立てて、社会貢献を仕事にする原さんの想いに迫ります。
*本インタビューは2019年11月時点での取材内容となります
フリーランスとしての国際協力
現在の活動内容
現在はどんな活動をされていますか?
僕の働き方を一言で表すのは難しいという前提で、国際協力を大きなテーマにして面白いと思ったことはなんでもやる働き方をしています。
僕の働き方には大きく2つの柱があります。
1つはウガンダ共和国における現場支援、もう1つがインターネットを使った情報発信です。
ウガンダの現場支援では、地元の子供たちに対する手洗い指導やゴミ拾いの清掃活動といった公衆衛生の改善、また女子児童に対する生理用品の支援をしています。
布ナプキンの作り方を教えたり、生理に関する教育を行ったり、といった感じですね。
ウガンダで取り組む生理用品の支援活動
また、支援ではありませんが、日本からスタディツアーを受け入れる事業もやっています。
もう一つの柱である情報発信は、ブログやSNS、最近だとYouTubeを頑張り始めていて、大きく国際協力をテーマにしています。
こちらは、「国際協力の分野に進める若い人を増やしていく」ためや、グローバルな社会課題を発信することで消費者の意識や行動変容を促すことを目的に行っています。
現状、新卒で国際協力の仕事をする受け皿が少なく、またそのために必要なスキルやマインドに関する情報も少ないため、自分の生き様や働き方を発信していくことで、後ろに続く若い世代を増やしていきたいです。
原さんが今一番やりたいことは何ですか?
今一番テーマにしているのは、「国際協力における新しい働き方を確立すること」です。
現場支援だけをやりたい場合は、フリーランスはコスパが悪いです。
僕は日本に住所を置いているので、年金や社会保険の手続きとかはNGOに入ってサラリーマンとして働けば、自分がやらなくても済みます。それを僕は今、自分一人でやっています。
フリーランスで働くことは、そういった関係のない作業もやるということなんですよ。
もちろんそういった事務作業を外注することは可能ですが、本当に現場だけに集中し、大きなインパクトを生み出したいのであれば、フリーランスで働くというのは最適解ではないです。
しかし、今それをやっているモチベーションは、新しい働き方をすることで、社会的にフリーランスとして国際協力に携わるという選択肢を確立するためです。
それができたら、僕の後の世代もそういった働き方があるんだと知って続いていけるのではと。
短期で考えると、社会に残せるインパクトはNGOや国連に入るほうが大きいけど、長期的に考えると今の働き方はそれが大きくなると考えています。
なので、国際協力における新しい働き方を作っていくことが今一番やりたいことです。
大学時代の活動
大学3、4年生はどんな活動をなさっていたのですか?
3年生の8月から4年生の5月はアメリカに留学をしていて、帰国したのち4年生の秋学期を休学しながらアフリカでインターンしていました。
4月になって復学して、大学生をしつつ起業したという感じです。
ウガンダで活動する認定NPO法人テラ・ルネッサンス(本部:京都)でインターンしていた時に、南スーダン難民の調査をしていました。
学生時代にインターン生として携わっていた、認定NPO法人テラ・ルネッサンスによる元子ども兵社会復帰支援の様子
当時2017年の2月は南スーダンの難民の問題がホットだった時期で、
支援対象の女性が亡くなった、
精神障害の男の子がみすぼらしい格好でいた、などその現状はかなり厳しいものでした。
この人たちはまさに今、緊急支援を必要としているのに、これから僕は、就職して働こうとか、2年間は大学院に行って勉強しようと考えていました。
そうやって自分が準備している間にも、問題に直面している人たちがいます。
自分はその現状を知っているにもかかわらず日本で準備していいのかと思い、最終的に南スーダンの難民を支援するためNGOを起業しました。
「今を生きる」~原さんの哲学とは~
国際協力する上で大切にしている考え
原さんはどんな考えを持って、国際協力をしているんですか?
まず面白いこと、新しいことをやるのはフリーランスになった重要な基準になっています。
最近の自分のモットーは「今を生きる」にしています。とにかく未来や過去を考えずに、今何をやるかを考えています。
例えば、キャリアプランを考えて、5年後こうなっている、だから今はこうするなど、そういうのは全く考えなくなりました。
では、ビジョンはもっていないのですか?
作りたい理想の世界像」という意味でのビジョンは持っていないですね。
ただ、「妄想する」ことは大事かなと思っています。
一年後はYouTubeの登録者が1万人くらいいて、異色の存在になっている。
数年後は、今活動するウガンダよりも厳しい現状化にあるコンゴ民主共和国でも活動している。
そういった数年後の妄想はありますが、決まりきったビジョンはないです。
シンプルに今目の前にあるやりたいことがあって、そこにコミットしたいです。
今やりたいことだけに集中して生きたほうが幸せになれると思います。
理想とする社会とかそこでの自分の役割は、一生同じものでなくてもいいと思ってて、起業した時は「不条理のない世界を作る」ということを本気で思っていました。
今は恐らく心の奥底にはありますが、それを普段から意識していることはないです。
ただ、「新しいワークスタイルを築きたい」という想いが、今の自分が仕事を続けている大きな原動力かなと思います。
しかし、この言い方ができるのは、フリーランスだからかもしれません。
組織で働く際にはビジョンは大切だなと思います。
それは、チームのメンバーと目線を併せるのに必要だし、そういう意味では、組織にはビジョンが必要だと思います。
「個人で働く」ということ
フリーランスでの困難な経験
社会課題解決において困難な体験や経験はありますか?
フリーランスで働いていると、現地でのポジションが不明確になることがあります。
地元のNGOと一緒に働いていますが、地元のNGOのメンバーなのか、それともNGOの代表の人と友人としての関係で働いているのかが分からなくなる…といった問題が一度起こりました。
現地NGOの周りの人間からポジションについて疑問を持たれてしまったので、MOUを結ぶなど、紙面ベースでも立場を明確にしました。
*MOU:Memorandum of Understanding(了解覚書)
そんな中で現地の人との信頼関係はどう築いたのですか?
現地パートナーのサイラスと過ごす時間や現地の方と話し合う時間を増やしたり、できる限り現地目線で考える時間を増やしました。
日本人として入っていくと、アウトサイダーという視点で見てしまうのですが、そこは徹底して現地目線で考えることをしました。
現地パートナーサイラス主導による公衆衛生改善の活動
現地目線で考えることで、何か変わったことはありますか?
現場に入っているときはかなりローカルな生活をしていて、現地のパートナーや支援先の先生の人は「貫太はもうウガンダ人だな」と半分本気で言ってくれます。
大きい組織の一員として派遣されてきたというよりは、現地の人と一緒に課題解決をしているという感じです。
これは、個人として働く強みなのかなと思います。
フリーランスで働く意義
原さんにとって個人で働くとは何ですか?
個人で働くことはすごく大事で、若いうちだからこそやるべきなんだと思います。
フリーランスで働くと、自ずと一人の人間として現地の人たちと関わることになります。
例えば、支援先の人もこちらを組織ではなく、一人の人間として捉えてくれますし、日本で講演会やイベントをするときは自分自身を軸にして話すことができます。
また、良くも悪くも社会からのリアクションがすべて自分に対してダイレクトに来ることになります。
それが時にはストレスにもなりますが、若いうちにそういったリアクションを感じるのは自分の成長につながると思います。
僕は寄付を集めたり、イベントをしたり、講演をしたりするときも「原貫太」という一人の人間として社会と接するので、目線がすごく「草の根」になります。
もちろん、これまでも個人として、草の根の活動をされてきた方たちはいます。
それでも今までの国際協力は大きな枠組みばかりに注目が集まり、結果として現地の事情を見ていなかった、一人一人の人間に寄り添えていなかったという問題も起きていると思います。
僕は、そういう意味では、今やっていることがある種いい「修業」になっているのかなとも思います。
国際協力に関わる人を増やす発信
国際協力の情報発信をするうえで大切にしていること
日本で現地のことを発信する中で、大切していることはありますか?
最近は自分を軸にして発信しています。
「ウガンダの問題」という枠だと遠く感じてしまうけど、「原貫太」というフィルターを通してなら、現地で起きていることも身近に感じられます。
つまり、僕という人間を近くに感じてもらったり、応援してもらえれば、その先の社会課題も身近に感じると考えています。
なので、自分を軸にすることは無意識的に大事にしています。
また、「自由に働きながら世界を変える」を目指したいと思える人を増やす、そういう発信を心掛けています。
なぜ国際協力に関わる人を増やしたいのですか?
ざっくり言うと、「いい社会を作りたいから」ですかね。
もう1つは既存の国際協力に違和感を感じていて、学生時代のインターンは一人一人に寄り添った支援をしていて、すごくいい活動でした。
その学びの一つとして、団体の理事長が書いた「ぼくらのアフリカに戦争がなくならないのはなぜ?」という本に書かれていた哲学が自分の中に刷り込まれて、既存の援助や大きな枠組みに疑問を感じることもあります。
開発世界の既得権益的なところには問題意識を感じることもあるので、個人レベルで社会課題解決していきたいです。
今後は個人の力が強くなっていきます。
現にSNSの発達を見ていれば、マスメディアに対して個人が物言えるようになっていますよね。
そういったムーブメントは、ほかの分野にも広がると思うので、個人で活躍できる人を増やしていきたいです。
原さんの思う「いい社会」とは
原さんの考えるいい社会とはなんですか?
公正」がキーワードかなと思います。
スタートラインに立てない人、例えば布ナプキンの支援とかも生理のせいで学校に行けなくて教育が受けられない。
そもそも夢をかなえるためのスタートラインにも立てないかなと思っています。
僕の支援は現地からのニーズがあって、それに呼応する形で始めたというシンプルなものでした。
しかし、よく考えると、そういった支援にモチベーションを感じるのは、現地の子供たちがスタートラインに立てるような支援をしたいという想いからでした。
そこから先は現地の人たちの力を信じればいいと思うので、夢をかなえるためのステップをサポートしたいなって思います。
読者へメッセージ
最後に社会課題解決の道を志す人達に応援メッセージをお願いします。
余計なことは考えずに、今自分が考える「やりたいこと」や「やるべきこと」に集中すればいいと思います。
学生でいろいろなしがらみを考えて行動を起こせない人がいると思います。
例えば、就活しているひとであれば、親や社会からのプレッシャー、いろいろあると思うのですが、そういった周りの声はいったん取っ払って欲しいです。
シンプルに今何がやりたいかを考える、その結果、自分がやりたいことや足りないものが出てきたらそれを身に付けて行く。
そういう姿勢で生きたほうが、トータルで幸せに、まっすぐに生きられると思います。
そういった意味で、自分に自信をもって今やりたいことをやる。自分の気持ちに真正面から向き合ってもらえたらなと思います。
原さんをより詳しく知りたい方はこちら👇
https://www.kantahara.com