組織やセクターの枠を超え、繋がりあうインパクト#2~元クロスフィールズ井上さん~
今回は社会課題に取り組む新興国のNPOや企業とともに、本来のスキルを活かして課題解決に挑むプログラム「留職プログラム」を提供しているNPO法人クロスフィールズさんでご活動されていた井上良子さんにお話を伺いました。
第二弾では、活動をしていて直面した困難だったことや、井上さんの大切にしている考えについてお伝えします!
中学生の頃に新聞記事で知った東南アジアでの児童労働の問題をきっかけに国際協力に関心をもつ。法律の専門家として途上国の子どもの人権問題に取り組むことを目指して大学では国際法を専攻し、国内のロースクールを修了。司法試験の浪人中にアジアを巡り、国際機関やNGO等を訪問するなかで自立的で持続的な課題解決の在り方に問題意識をもち、ソーシャル・ビジネスの考え方と出会うソーシャル・ビジネスに大きな可能性を感じ、法律の分野から転身、国立大学の研究センターに所属し、 ソーシャル・ビジネスの(1)普及・促進、(2)創出支援、(3)研究・教育に従事。人と組織の成長に関わることにやりがいを感じ、より現場に入り込み、 日本の可能性も広げる形で途上国と日本の社会を変えていきたいと2017年10月より加入。(※インタビュー時)
*本インタビューは2020年4月時点での取材内容となります
組織やセクターの枠を超え、繋がりあうインパクト
ビジネスやパブリックなどのセクターごとのメリット・デメリットを教えてください
セクターごとに特徴はあっても、各セクターがインパクトを出し合うエコシステム全体の中では、メリット・デメリットは無いと思っています。
各セクターはそれぞれ強み・弱みがあり、それらが補完しあう関係性の中で役割の違いはあっても、私はメリット・デメリットとは感じません。
例えば、児童労働の問題を解決するアプローチは複数あります。
草の根的に日々子供たちや女性に寄り添う仕事もあれば、政府、国際機関が法律等の制度を整えることで支援するというアプローチもあります。
現代では様々な原因が重なり複雑化し、問題が絡みあっている構造の中で、一つのアプローチだけで解決できる課題はないです。
そのため、各セクターがそれぞれの強みやリソースを持ち寄って協力し合い、繋がりを強固にすることで各々の力を最大化できるはずです。
クロスフィールズや国連フォーラムの活動でうまくいかなかったことはありますか?
難しさを感じるところは、「違うもの同士を繋げること」です。
これは、非常に大きな責任を伴います。
両者をつなげるためには、日本の企業がどんな機会を必要としているか、途上国のソーシャルセクターでは何が求められているのか、いずれについても当事者と同じくらい熟知する努力をしないといけません。
両者がマッチした時は、社会にインパクトが残せるだけに、やりがいがあると同時に、常に難しさと責任は背中合わせだと実感しています。
どちらかの目的に偏ってしまうような一方的な関係にならないよう気をつけています。
井上さんが人生を通して大切にしている考えを教えてください。
これまでの経験から気づき、私が大切にしていることは、「自ら異なる価値観に出会いにいくこと、常に複数の視点から物事の全体像を俯瞰して見ること」です。
現地の課題に取り組む時、事前にいくつかの仮説を立てられますが、すでに自分のバイアスがかかっています。
課題に直面している現場・現地には、元からの文脈や様々な関係性、バックグラウンドがあります。
必ず現場・現地に赴き、現場での複数の立場の声を聞き、その課題が起こっている全体像を把握する。
そして、課題を俯瞰して見ることで、より本質に近づけます。
私がこの考えに辿り着いた理由は、現場に学び、多くの異なる価値観と出会えたからです。
国際協力に関心を抱きながらも、机の上だけで法律を勉強していた頃は、世界で何が起こり、背景には何があるのかも知らず、狭い世界で志だけ空回りしていました。
しかし、自分だけの思い込みや狭い世界観を飛び出して、世界で起こっていることやそこに暮らしている人々、世界をよくしようとチャレンジする人たちに出会ったからこそ、様々な見方ができ自分の新たな可能性も感じられました。
それ以来、自分の見る世界がすべてではないと常に意識し、新しいイノベーションを生み出すために、どんどん異なる価値観に出会いに行くこと、そうして得られた複数の視点から俯瞰して全体像を見ることを心がけています。
今の活動で必要だと感じた知識、スキルがあれば教えてください。
知識、スキルよりも大切だと感じていることがあります。
それは、「社会をよくしたい!」という想い(Vision)を持ち、創りたい社会も自分の進路も自らデザインすることです。
尊敬するユヌス博士は、若者に「job seekerになるな、job createrになれ」といつも語っていますが、起業家にならなくとも、Visionをもって社会も仕事も創っていく起業家精神は、私たちの創造性を活かす上でとても大切だと実感しています。
そして、自分のVision/Missionを定めるには、頭だけで考えるのではなく、自分の感性の向く先を探求し続けていくことが一番大事だと思います。
理屈抜きでおかしいと感じることや、説明するのは難しいけど夢中になることを探す旅、そのプロセスで自分の想像さえも越える可能性に出会えたとき、自由に無限の創造力を活かして、社会と自分の人生をデザインしていくこと。
若い世代の皆さんに伝えたいメッセージです。
次回の第三弾では、理想とする社会や読者へメッセージについてお伝えします!