「主体性」が「世界平和」を生み出す〜延岡由規さん〜
「志を持った人を増やしたい」だけど、手段がみつからない。
そのような人は多いのではないのでしょうか。
今回は「意欲」「創造性」をキーワードにしながら、国内の10代を対象に活動しているNPOに勤務しながら一人一人の主体性を育む活動をしていた延岡由規さんにインタビューを行いました。
延岡由規
1993年、兵庫県生まれ。
2002年、小学3年生時、道徳の授業でサッカーボールにまつわる児童労働問題を知り、社会で起こっている問題に関心を抱く。
大学生時代から国際協力NGOでのインターンを始め、ウガンダやカンボジアにて紛争被害者の自立支援に従事。
大学卒業と同時に同NGOに就職し、カンボジアに駐在。
2018年12月、国内の教育NPOにフィールドを移し、2020年4月よりNPO法人e-Educationに転職。
*本インタビューは2020年2月時点での取材内容となります
サッカーボールの縫い目に衝撃を受けた8歳
社会課題に取り組むきっかけから、現在に至るまでの流れを教えてください。
一番最初のきっかけは小学三年生の時です。
道徳の授業で、「サッカーボールの白と黒の縫い目のところが、インドやパキスタンの児童労働によって出来ているんだよ」という話にすごく衝撃を受けました。
その後は、児童労働に関心を持ちつつも、サッカーに熱中する中高生時代でした。
大学入学後、認定NPO法人テラ・ルネッサンス理事長小川さんの講演をたまたま聴いたことがきっかけで、「アフリカ」、「ウガンダ」、「子ども兵」というキーワードに関心を持ったのです。
その後、本を読んでいると、「子ども兵は世界で最悪の形態の児童労働の一つだ」という文言を見つけ、小学生の経験と結びつき、これは自分の取り組みたい課題だと感じました。
それから、テラ・ルネッサンスでインターンをはじめ、ウガンダに行きました。
テラ・ルネッサンスは、「すべての生命が安心して生活できる社会の実現」を目的に活動するNPO団体で、『地雷』『小型武器』『子ども兵』の課題に対する現地での直接的な支援活動をしています。
ウガンダでは、絶望的な人生を歩んできた人たちが、自分で生きる力を取り戻して、自分の身の回りに広げていく姿を見て、こういう社会を実現したいと想いました。
そして、そのままテラ・ルネッサンスに就職しました。
なるほど、その後テラ・ルネッサンスから国内教育NPOへ転職したのですか?
そうですね。
テラ・ルネッサンスでは、カンボジアの事務所で一年半働いていました。
そこから、転職することになった理由は2つあります。
1つは、事務所で働く現地の方のモチベーションが上がり、彼らに事業を任せられるようになったことです。
自分の役割は、現地の人が主体的に取り組めるように環境整備をすることだと考えていて、達成に近づけられたと感じました。
もう1つの理由は、もう少し広い範囲にインパクトを起こしたいと思ったことです。
カンボジアでは、昔に地雷が埋まっていた地域で活動していたんですね。
そこでの活動は良くも悪くも、地球という大きな中の、村の数十世帯にしか直接的なインパクトを与えられないです。
自分の実現したい社会に向けて、自分の関わり方はこのままでよいものなのかと考えるようになりました。
現地での支援という役割はもちろん大事なんですけど、もう少し広い範囲でインパクトを起こしたいと思いました。
具体的には、現地での社会課題を自分たちで見つけて、そこに対して仮説を持ってアクションを起こせる組織、人財の発掘や育成をしたかったです。
それで、現場を一度離れ、やりたいことの一致するNPOに入社しました。
ひとり一人に未来をつくる力がある
NPOで働くメリットやデメリットを教えてください。
デメリットは、基本的にないと思います。
早く現場に行ける、現場の最前線でエンドユーザに直接関わってサービス、支援を届けられるというのは最大のメリットです。
NPOでは、十分なお給料もらえるのか不安なのですがいかがでしたか?
不安は、一切なかったですね。
もともと、最低限生活できたらいいかなと考えていて、NPO界隈の先輩方のなかでも、結婚してお子さんがいる人もいて安心できました。
それは不安にならないですね!就活の時は他の業界や一般企業は考えていましたか?
最初からNPOを選んだっていう感覚はないです。
もともと、自分の本当にやりたいことをやってるところがなければ起業という選択肢も頭の中にはありました。
自分のやりたいことが一致する団体があったからそこを選んで、それがたまたま2回ともNPOでした。
活動をするうえで大切にしている考え方を教えてください。
「ひとり一人に未来をつくる力がある」というのは身をもって感じ、大切にしています。
外からやってきて支援をする私たちの役割は、目の前にいる人が何かしらの外的要因によって抑えられている、本来持っているはずの力をいかに発揮できるか、その環境を整えることです。
私は比較的、ビジョンに対して行動を取るタイプなので、いろいろな人の実現したい未来の部分に焦点を当てて、「そこに一緒に行こうよ」と、一人でできることは限られているのでいかに手を取り合って進んでいくかを大事にしています。
その想いをもった原体験は何ですか?
ウガンダでは、1980年代後半から始まった内戦中、武装組織に10歳前後の子どもが誘拐されることもありました。
しかし、その後解放されたとしても、家族からも差別され、銃の撃ち方しか教わってきておらず、読み書きも難しいような状態になってしまいます。
そういった人たちでも、きっかけがあれば変われるんだとウガンダで感じ、そのきっかけを提供していたのはテラルネッサンスでした。
もともと人間として持っている力っていうのは現地の人の姿から感じましたね。
ひとり一人が自分の人生を主体的に生きること
理想とする社会と、なぜそこに自分が関わりたいかを教えてください。
一番大きなところでいうと世界平和ですね。
その世界平和は、人それぞれの定義する世界平和で会ってよいと考えています。
私自身もその定義はこれまでも考えてきてますし、自分の居場所や年齢でも結構変わってきているので、そういうものだと感じています。
世界平和を実現するためにいくつか必要なことがあります。
その一つで、「ひとり一人が自分の人生を主体的に生きること」、その環境を整えるのが自分の中でミッションとして感じていることです。
そういった身の回りの課題に取り組む人が増えないと、社会が根本的に変わることはないとカンボジアにいた時にすごく感じていました。
「主体性」を一つのキーワードにして、国内外問わず自分の人生を自分で選んでいく環境づくりに取り組んでいきたいと思います。
国際協力、社会課題解決を目指す人にメッセージをお願いします。
一番時間をかけるべきなのは、問題設定です。
その中で現場に行くことやいろんな人に話しを聞きに行くことは必要です。
また、いろいろ経験していく中で、これを解決したいと決まったとしてもそれは仮決定でいいと思います。
これをやるんだと一つのものが強すぎると自分を苦しめるのではないのかと思うので、そこはうまくバランスをとりながらやってみてください。
一人でできることは限られているので、敵は作らないで、一緒にやりたい人がいたら一緒にやればいいし、やりたくない人がいたらお互いのフィールドで頑張りましょうという感じで、余裕を持って頑張っていくのがいいのではないかと思います。
世の中は思っている以上に明るく、希望の光が無いなんてことはありません。これからの未来を照らす光が、いかに消えないように、より輝けるようにやっていくのが今の2.30代の人に向けて言いたいです。
我々が頑張ればその先は明るいと思うので、頑張りましょう。